Untitled
素材など
- 2012年 制作
- 陶土、磁土
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この頃からカラフルな作風になっていった。それまではフォルムに対する意識の方が強かったが、色同士の組み合わさり方によって生じる印象を楽しむようになり、今に至る。
感覚をとおして感じる世界
普段当たり前として受け入れている現象がふと気になったり、不思議に思えたりすることがある。
夕方、長く伸びた影が、自分のものでは無いように思えたり、トンネルで反響する自分の靴を頭がどこか、不思議なものに聞こえたり。本来、意志を持ったのはずの物に命が宿っているように思える瞬間があったりする。そして、そういった現実に広がっている世界に対する感覚は、時として、私の存在そのもの、をも、不思議に感じさせる。
このように五感をはじめとするすべての感覚を通して、私を取り巻いている世界は、形を変えて、私の中に入ってくる。
このような、私のフィルターを通した世界を立体化することで、現実世界から得た、現実とは異なる感覚の実体化を図った。
幸せはいつもそばに
素材・サイズ
- 2013年 ペーパーウェイトとして制作
- φ 8 × H 6 cm
- 磁土、刺繍糸
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焼成前に生地にステッチのための穴を開け、焼成後にその穴をとおして刺繍をした作品。磁器の生地には、本来の刺繍のステッチどおりの穴が開けられている。
陶磁器のもつ新たな印象を探る
やきものを見て、それが柔らかい質感であるような錯覚を受けることがある。
「実際は固いものなのに柔らかそうに見える」と言う点に面白さを感じ、そういった面を引き立てるため、本来、布などの柔らかい素材に用いられる“刺繍”を施そうと考えたら。
特に柔らかそうな印象をうける白い生地と、艶のある鮮やかな色彩の糸を組み合わせることで、陶磁器そのものが見えるものに与える、新しい印象を目指して取り組んだ。
今は亡き祖父に捧ぐ
素材・サイズ
- 2014年 制作
- W 67 × D 52 × H 7 cm
- 陶土
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祖父の死を受けて、悲しみを昇華するために制作した作品。
抜け殻となった身体が、生きるものとは異なる時間の中へ沈んでいくイメージ。ここでいう「時間」は、死者にとって、「この先進むことのない夢」と化した時間であり、残された生きる者たちの「記憶の中に流れている時間」を指す。実在しない夢の世界。
作品を構成するパーツはひとつひとつ作成している。ここから、「飾る」ことを目的とするのではなく「想いの集積」として装飾表現を行うようになった。これは、のちの “美しい偽り” や “生きるということ-自己という棺のなかで- ”といった作品にも繋がっていく。
死について
その日、私は1人の人間の人生が終わったのを見た。生きている時間を共有した。その人の時間が止まった様を、進み、続ける時間の中で眺める、自分を不思議に思った。
「死」は究極の「静」であり、すでにそこに魂はいなかった。魂はどこへ行ったのだろう。そもそもそんなものは存在したのだろうか。人間の意識の存在、そして存在そのものに疑問を抱いた。
すでに亡きその顔を夢中でノートに描いた。その姿が、もうすぐ失われるのを恐れると同時に、どこか美しいとすら感じた。姿そのものと命の終わりを止めたいと思った。目の前の事実を受け入れるためには、そうして、自分の中で「死」というものを消化するしかなかった。
触れた肌の冷たさは、心にまで染み渡り、その時になって初めて私を実感した。炎の音は、私に救いをもたらした。神聖な炎に乗って、祖父は澄んだ世界へ行ったように感じられたからである。お骨は軽かった。しかしそこには85年と言う莫大な時間と人生が詰まっていた。その重量の軽さに小さくなってしまった。祖父を思い悲しかった。
悲しみの中、光、風、森羅万象に祖父の存在を感じるようになった。それは「死」が四季の移ろいと同じ、変化の1つだと受け入れられたということだ。私の中には祖父と同じものがある。祖父の人生の中に私は存在し、私の人生の中に祖父は存在する。受け継がれていくもの。祖父の姿から私は永遠を見つけたように感じた。
(祖父が亡くなった頃の日記より)
春の小道に
素材・サイズ
- 2014年 制作
- W 25 × D 10 × H 15 cm
- 陶土、磁土
春をふみしめる
「春」は足元に生命が満ちているのをかんじる。風の香りやあたたかい光のなか、春のエネルギーを踏みしめて歩く。
家に帰ると、靴は春にそまっているような気がする。春色にそまった靴は、また春の小道へとわたしを連れていく。
輝く春
素材・サイズ
- 2014年 制作
- W 5 × D 5 × H 6 cm
- 磁土
春への想い
学生時代暮らした金沢は、冬には雪に埋もれる街だった。金沢で過ごした6年、わたしはそれまで以上に四季を感じて日々をおくった。
静かな雪の夜には、春へ想いをはせる。“春”は、やってきたかとおもうと、あっという間に過ぎてしまう。生命の輝きはじめるわずかな時間。その輝きをとどめるような想いで制作した作品。
あの日の夢を花束にして
素材技法・サイズ
- 2015年 制作
- W 20 × D 15 × H 5 mm
- 磁土、silver
陶磁×ジュエリー
陶磁という素材の、ジュエリーとしての可能性を探ろうと取り組んだ作品。陶磁のパーツを金属と組み合わせており、金属部分も自身で制作している。
白い磁器土に上絵の具の透明感のある鮮やかな色を組み合わせ、細かな装飾がガラス質の中に閉じ込められているような仕上がりになっている。大切な想い出を留めたような、磁器のペンダントトップ。