美しい偽り
素材・サイズ
- 2013年 制作
- W 108 × D 54 × H 60 cm
- 磁土、陶土
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陶土を胎に、透光性のある磁土を用いて装飾を行い、上絵・金彩により彩色を施している。装飾部分は、「泥漿」といわれる泥状の粘土を用いており、非常に脆い。これは、“女性”の「虚飾」「偽り」を表現しており、実体がなく、はかなくもろいことを暗示している。
下着部分は現実を意味し、「偽り」を表す装飾部分との対比を担う。
自覚のないままに、“自身を構成する一部”となった、「偽り」を表現するため、「偽り(=装飾)」の集合体でありながらも、人の形を保たせた。頭部を持たないのは、特定の個人ではなく、“象徴”としての女性を表すためである。
この作品は「他人に見せる姿」「魅了させる姿」を表現していることから、展示台にベロアを用い、夕暮れのショーウィンドウをイメージした展示を行った。
コンセプト
同じ作品でも、みる側の経験と響きあうことで、解釈が同じでも年月を経て見る度に感じ方が変わる。そこに着目してテーマを設定した作品。
鑑賞者を「子ども」として例を挙げると、コンセプトは伝わらなくても視覚的な印象が残る作品であること。大人になるにつれ、経験の蓄積により、記憶の中の作品が持つメッセージが結びつく瞬間が訪れるのを目指した。
作品制作において「核にあるメッセージの伝達」が最大の目的であるなら、文字によって他者に提示することが最も確実な方法だろう。ではなぜ立体に起こすのか。
鑑賞者の前にあるのは「作品」のみ。だからこそ、「自分」というフィルターを通すことで、メッセージを伝えると同時に、鑑賞者の「想像」を広げることができると考えた。この頃目指していたのはそういった作品をつくり出すこと。